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 1-2 トレーニングの基本(其の二)


人間も動物である。生まれる前から母体の胎内で運動を開始している。この運動は、手さぐりの動作である。ここで、手先の感覚は大きく発達する。そして母体を離れ、生まれたときには、手をしっかりと握り締めて何かつかもうとしている。このことは、生れながらにして身についた、生きて行くうえで最も大事な動作の一つであると思われる。


トレーニングの基本を明らかにしようとすれば、それは人間の発育、発達の位相を振り返り考えてみることに解決の糸口があると思われる。


トレーニングは発育・発達の順序に従って行うことである。即ち「這う」、「座る」、「立ち上がる」、「歩く」、「とぶ」、そして「走る」等の順である。「投げる」動作は「座る」動作が出来たときから始まっている。人間はだれでも同じように動作を習得するのである。特に大事なことは「這う」という動作を習得する前の、寝て頭を持ち上げる動作である。これは首の運動である。だから首がしっかりしないと這うこと、座ることはできない。このことは専門家と言われる人でも見過ごしているように思える。


投擲のトレーニングについて専門的に述べれば、「投げる」という動作の根源は、「握った」ものをはなすことを意味している。一般の人は、「投動作」の意識として、遠くに投げることを想像している様に思える。しかしながら、投げトレーニングの基本練習では、まず「座って」近くに投げて、投げに貢献する関節や筋群を増やし、だんだん遠くへ投げていく。次に、後に述べる分習法の各動作を素早く正確に行えるようにすることである。さらには、より高度な技術に内在するリズム・タイミングを身につけていくことである。また、「投げ」の動作はすべて首によって誘導されるので、首のトレーニングは各段階を通じて行う必要がある。