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 1-6 首


人体は、精子と卵子が結合した後、母胎内で受精卵がのう胚期を経て形成されていく。この過程をみると、頭部は早期にできる。そして、目は見えなくても胎児は運動をはじめる。この頃の形態をみると、頭部の占める割合は全身からみると大きい。したがって、首にかかる負担も少なくない。興味深いのは、胎児はすでに首の運動をはじめているということである。首の運動・手足の運動は出生後必要かくべからざることであるから、神が胎児にその準備運動の期間を与えているのかもしれない。


一般に、体力トレーニングとは全身筋力の強化として述べられているが、全身の中に首のトレーニングを特別に取り上げた参考書等の出版本は、あまり見当らないのである。パソコンは、仕事の能率をこれまでの数倍にあげた。しかし、その弊害をいえば、机の上の画面と向かいあっている時間が長く、腰痛や肩こりの病を多発させていることである。同じ姿勢を長く続けることは、筋肉にとっての疲労を深くする。人の身体は、全身疲労よりも局所疲労(肩こり・腰痛)の方が回復しにくいのである。首の周辺の筋肉をリラックスさせるための方法は、まず、温シップ、即ち風呂や温泉で身体を温めること。また、頭が下になるように下半身を上にして横たわること、さらに軽いマッサージも効果がある。


円盤投げだけでなく、投擲選手は身体をひねる運動をするので、疲れた首を治療するよりも、常に首を疲れないようにすることが重要である。首のトレーニングとしては、メディシンボールや砂袋等を頭に保持して、首で上げたり下げたりする運動が筋力強化にも効果がある。原始的で苦しいことだが頚動脈の強化にもなるので脳のためにも有効であると思う。学生時代にはラグビーのヘッドギアに砂袋を下げて、首のトレーニングをした。全身の回転運動のコントロールは、まず、頭部の誘導が最も大きな要因となるからである。