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 1-8 「リズム」「タイミング」の根源


一般に指導者といわれる人の多くが、トレーニングに関して技術(動作)のみにとらわれている様に思えてならない。大事な「リズム」や「タイミング」などが、ひと口で簡単に何処かにさらりと流すように語られている。その人達は本当の技術や技術トレーニングについてあまり明るくない人である。「あの人はリズム感がある」と聞くことがある。また、あの選手は「タイミング」がよい等という声をよく耳にする。「タイミング」は身体の技術動作と呼吸法の両方に関連をもつが、力の発揮に協応して呼吸を爆発させるとき、より大きな力が発揮されると考える。


呼吸・鼓動のリズムと身体運動のリズムとの間には深い関係がある。例えば、突然の火災や地震の時のように、びっくりし、身体が燃え上がる程興奮した時、心臓の鼓動は高まる。こんなとき話をすると早口になるだろう。これとは逆に、寝ているときの鼓動は一般的に低く安定している。さらに、起きて動き出せば、筋肉活動が激しくなり酸素を要求されるので、心臓だけでなく肺とも関わってくるのである。激しい「リズム」「タイミング」にかかわる運動は心肺機能、平衡感覚等と無関係では生まれないと考えられる。


私は、「リズム」「タイミング」にかかわるトレーニングは他のトレーニングと比べてもっと激しく苦しいものだと認識している。例えば、自衛隊の訓練等は未知の自然環境の中で一つ間違うと命を落とすくらいの緊張の中で行われるため、心肺機能の疲れは倍増する。このようなことが続くと、ストレスで胃壁も破れる位に身体を消耗することがあるという。また、禅の関わる修行でも、この修行が最も激しくなると、命を落とす可能性もあるのだ。


本当に高い技術トレーニング目標を設定し、実践練習するには、知的な「リズム」「タイミング」を重視した練習法と強い意志力が要求されるのである。