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 1-9 学べ!鳴かぬセミより


「横隔膜」。聞き慣れない単語である。したがって重要性も低いと思われがちだが、実はそうではない。


横隔膜は、下位の肋骨や胸骨、腰椎から起こり、胸腔と腹腔を境する板状の筋と腱膜で出来た大きな膜である。一般にこの膜が痙攣すると「しゃっくり」という状態が起こり、莫大なエネルギーが要求される。このため、平常な呼吸を乱す。誰でも幾度となく経験していると思われる。この膜は、身体の動きをタイミング良く行うための呼吸法と大きな関連がある。特に、激しい運動時には、この膜の関与の仕方が動作に大きく影響するのである。


トレーニングメニューが立派にそろっていても、その「行い方」を誤れば効果は得られない。例えば、外からは肉眼で確認することが不可能であるから明解なデータがないが、この膜は、運動中は吸気や腹腔の内圧を高めるような動作において強く働くと思われる。また、投擲動作にはすべて「ひねり動作」が関与するので、一般のトレーニングと違って、ひねられた状態での横隔膜の関与を考慮してトレーニングをすることが要求される。大変苦しいトレーニングではあるが忘れずに実行することである。


セミは、腹部の膜の振動によって声を出して鳴くことができるが、最近のセミは子ども達に追いかけられて鳴いて逃げることがないため、鳴かなくなっているらしい。体幹の筋のトレーニングは、日常から継続してこそ効果がある。鳴かぬセミよりトレーニングの重要生を知ってほしいものである。


隠れて見えないところを見捨てないで、むしろ、その部位を取り出して強化することが本当に大事なトレーニングと考える。