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 1-13 前脛骨筋


この筋肉は、膝と足との間の前側にある。別名、弁慶の泣き所と言われる脛骨(別名、スネ)の部分に付着している。この筋は、つま先を上げるときや、膝を前に出すときに作用するのである。例えばサッカーのキック時の足首の使い方やスキー、スケートの滑走時の足・膝の使い方や投てき動作時、即ち「構え」や「投げ」の時、足首を曲げると同時に膝を曲げる動作等の動きに使用する。その場ジャンプの際のしゃがみ動作にも欠かせない筋であり、足首を背屈するためにはまず前脛骨筋の作用が要求される。


人の身体(運動)は、上下運動する場合に関与する大きな関節(足首、膝、腰)の屈伸運動によって行われている。上に跳び上がろうとするときは、まず下にしゃがまないと上がれない。強いしゃがみをするためには、まず「足首の関節」が強靭であること、次に大切なのは「膝の関節」であり、続いて「腰の関節」である。これらの順に従ってしゃがむことができ、逆に上にあがるとき腰→膝→足首の順に対応して上に跳ぶようになる。


足と膝の関係についてみると、足首を曲げ支えることができてはじめて、膝関節を動員させることができる。例えば、スキーやスケートなどで指導者はよく、膝を曲げさせるためのアドバイスとして、「足首を背屈しなさい」と言っていることがある。このことからも足関節の動きの重要性が理解できよう。


脚の伸展能力に関しては膝関節が注目されるが、特に屈曲の際には前脛骨筋が重要な働きをすると考えている。例えば、球技にみられるような素早い急激な反応動作・方向転換が要求される場面で、脚を屈曲した状態で、膝の方向を変えることで反応の方向を変えるようなときには、前脛骨筋がよく働く。前脛骨筋はヒラメ筋や腓腹筋に比べて小さく目立たないが、強化を怠ってはならない。足関節の機能こそが「技」の根源である。