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 2-5 梅


古来より梅は、いろいろな料理の食材として、また、薬としても重宝されてきた。郷里の自宅の庭にも梅の古木があり、毎年たくさんの実を収穫していた。梅とシソ葉を漬けて赤色の着色をし、夏には梅やシソ葉を太陽に干す仕事も手伝わされた。その頃、食べものが無く、菓子などもなかったため、梅干しを口にくわえながら遊んだものである。梅の種を割って中の白い胚ごときを食べると頭が良くなるといわれ、半信半疑で食べていたことも懐かしい。


わが家では、六月頃梅雨に入ったときには、食中毒防止のため、毎食一粒ずついただいた。昼に弁当を持参する時は、ご飯の真ん中に大きな梅干しが一つ入っているご飯の真ん中に大きな梅干しが一つ入っている「梅干し弁当」(「日の丸弁当」と呼んでいたが)が大変おいしかった。


梅干しの使い道は、(イ)下痢をしたときお粥と一緒に食べる。(ロ)熱が高いとき頭「デコ」やこめかみの箇所に種を抜いて張る。(ハ)風邪をひいたときに酒の中に入れて温かくして飲む。(ニ)削った鰹節と混ぜて食べる。(ホ)ダイコンを細切りにして梅をつけて食べるなど様々である。酒の「つき出し」にも良い品である。


梅の産地は水戸、紀州(和歌山)が有名である。私は水戸の梅よりも紀州の梅を好んで食べている。紀州には「梅のエキス」と言われる梅を煮詰めて果汁を抽出したものがある。和歌山工高の松本一廣監督推薦のこの品は、和歌山市内の「ホテルはやし」より贈られてくる。外国旅行に行ったとき、食後に少しなめておくと腹をこわさないので安心である。また、口内炎にも速効力があることも体験して驚いている。紀州の梅にお世話になるたび、浄土宗で云われている「西方に極楽浄土あり」という言葉を想いだし、「ホテルはやし」のおばあちゃんや林秦行社長、松本先生にも時々合掌している。