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 2-10 朝食の思い出


監督時代であったろうか。忙しくて我が子と接する機会がだんだんと少なくなってきた。勿論、晩飯は一緒に食べることはできなかった。 朝食だけは一緒に食べて僅かな時間でも対話を交わすことが家族のコミニケーションであった。少しはサービスしようと思い、「どうや?」「しっかりやっとるか?」などいつも声をかけていると、「いつも同じことを言っとるナ!」なんて言われたことがあった。こんなとき子供の成長の速さに驚かされた。


これではいけないと思い、話題をつくるために実践したのが、どんなに夜遅くとも寝る前に教科書を一読することであった。テストで×印を探して、誤りを正しているか、正しい○印の箇所も、反対の質問をして、正しく理解しているかを朝食時にとぼけて聞いてみることにしたのだった。


教科書等を読んでいると、大人にも有益な、素晴らしい、為になることが沢山書いてあることに感動した。昔、小学校の頃の本にも、これほどまでに素晴らしいことが書いてあることに気付いていなかった。漢字だけ覚えて内容の大事さを忘れていた自分を反省した。「ハロルドの冒険」の一説で三人で知らぬ所に行くとき、みんなで責任を持って仕事を分担し、協力して冒険を進めるシーンを今でも思い出す。本の内容を、試合のミーティングのネタにしたこともあった。


また、子供の宿題で、絵を描く課題がでたとき、夜中に私のイメージで子供の描いた絵を少しいじくってみたことがあった。翌日、子供は、自分の描いた絵が違うのに気づいたのであろう。怒って宿題を提出しなかった。今も「ある日の朝食」を思い出すのである。 ちょっと酒がまわり、やりすぎた出来事であったと今では反省している。