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 2-13 ひもの・いりこ(じゃこ)


一般に「ひもの」とは、新鮮な魚を陸上げした後、そのまま干したものや軽く塩した後、干したものである。ビタミン・ミネラル等、身体に必要な栄養が沢山含まれている。大切なのは何といっても魚が新鮮であることである。干し方については、本来は天日に干し、空風をあて干す。しかし、最近は乾燥機で干すようである。


「西藤式」朝食の中には「いりこ (じゃこ)」といって瀬戸の海でとれる三〜五センチ位の小魚を一度軽く湯に通した後、天日に干したものがある。食べ方は、マヨネーズ、醤油、唐辛子を混ぜたものをつけて食べる。大根と一緒に食べる方法もあるが、最もおいしいのは、山椒の醤油漬をその場で小さいすりバチですって、醤油たれを掛けて食べる方法である。酒やビールのあてにもなる。たれ造りが秘訣である。夏など疲れて、味覚、特に舌がマヒしているとき、山椒の味がピリッと口の中に広がり噛めば噛むほどよい味が出てくるのを実感する。仕事から開放された後の一杯は、翌日、目がパッチリして、身体がしゃんとするのが解る。えさや水が悪い所の魚の内臓は毒素が内臓にたまることから、その善し悪しについては賛否両論あるが、私は、瀬戸内海のものは積極的に食べるようにしている。魚は海の中の食べられる物を人間より先に試食して海産物の良否を教えてくれているのである。


また、魚頭は目玉があり、かみ砕くのが困難である。したがって、ミキサーで細かくしてワカメと一緒にして「自家製ふりかけ」を楽しんでいる。不思議と翌日の目覚めがよく、遠くも近くもパッチリと見える。字を書くときはいつも欠かさず食べている。


人工の調味料よりも、ひもの(いりこ)を噛んでいる間に滲み出る味は、他に代えがたいものだ。人体は疲労が蓄積すると、味覚が鈍くなる。こんな時は何を食べてもおいしくないが、「いりこ」だけは、噛んでいると味がじわじわとにじみ出てくる。この味は疲労を取り去ってくれるように思える。