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 3-10 教えているのは「酒の味」


長く教職に従事していると生徒や学生から苦しい生活に耐えられずに「その悩み」をぶっつけられるときがある。「記録が伸びない!」「体調が悪い!」「なぜこんなことをしているのだろうか?」「練習意欲が出ない」・・・突然、このような悩みを持って来られても驚くばかりである。こんなときは、一般的なことや基本に還ることを忘れてはいないか?また振り出しに戻って考え直せ!練習手段について一つ一つ確認せよ!等を話すことにしている。


しかし、大事なことは、記録のことや勝負も勿論であるが、本当は、陸上競技で苦労して、自分の力で今のスランプを乗り越えていく努力をすることである。今こそ頑張ることが、自分を強く大きくするのだ!


今の苦労や努力は、終生忘れないだろう。近い将来、友人や同僚と、苦労したもの同士で食事をしたり酒を飲んだとき、過去の苦労話が酒のサカナになったり、食事のムードを高めるのである。即ち、私は皆に陸上競技を教えているのだが、本当は酒の味を教えているのやぞ!今一度、人生にとって大事なことは何かをよく考えて、日々努力すれば肩の重みもとれて、身体も楽になることだろう。


酒の味、食事の味は、そのときどきの話題の深さや長さにあるとも言えよう。君もあなたも、もうすぐ自分を試す日が来るぞ。苦労は自分から進んでやらんとあかんぞ。急げよ!今ぞ!!


、むやみに汗を流しているのではない。その過程において、自分の課題解決のために「何を」「どれだけ」「どの様に」などを真剣に考え、全ての英知を結集して決断をするのである。日本古来の武士道でも単に「技」を教えるのではなく、そこに内在する「心」を教えてこられたことを思い出すのである。